介護職をはじめると入浴の介助をする事になる。
入浴・排泄・食事が3大介護だと言われている。
入浴のメリットは
マンツーで一人に関われる事。浴場という空間は人が少ないので、その方の話を聞くことで普段どんな事を考えているか。なかなか聞けない個人的な事を話して頂ける事がある。将来的な情報につながる事もある。
行動のパターンを把握する事も出来る。
入浴の気をつけたい所は
事故が起きやすい。転倒。転落。体調不良での入浴で体調変化。
もしかしたら介護職は誰でも一回は経験しているのでは無いか。
ポイントは
利用者個々のリスクを把握する事。
浴室や脱衣所の環境を把握する事。
だと思います。どちらも大事ですが浴室浴場も数えると5つのお風呂環境で業務にあたりました。大体手順や初回の手順はマニュアル化されています。
体調確認以外にもプライバシーの配慮等色々と入浴に関しては配慮していく事が多いのですが、今回はマンツーで関われるメリットだと思った経験を残していきたい。
10年以上前の新人の時です。まだ介護に転職して数週間。
この事業所は人数も少ないですが手順書も無かった気がします。
介護は後に思うのですが、介護度が高いからと言って介助量や負担が減るものではありません。
なんとか先輩職員に教わりつつ、単独で入浴担当をこなせるようになった私。拒否された時の個別の対応方法等その先輩職員には多くを教わりました。
そんな折とにかくおっかない方がサービスを利用開始しました。
年齢は70代(男性)怒鳴る。人格を否定する。気難しい。
後に「無」になるとか様々な奥の手を会得する私ですがはじめたばかりなので真剣に困りました。
一般に「辞めない方がいい会社」を辞めて介護職についた私。
入浴も任されたいしこの後、夜勤もやらなくてはいけない。
とにかく大急ぎで一人前になりたいと謎の気概だけはありました。
打てる手は全部打つ。
何故いつも怒っているのか。怒っていない時はどんな時か。怒られにくい限られた職員はどんな人なのか。
勿論周りの人に相談もしましたが個人として「怒りの背景」にあるもの。
その方の背景をよく研究しました。
70代。まだご自身に介助が必要だと心の準備ができていな時に病に倒れ麻痺が残り要介護になってしまう。育てたはずの子供達も理由はあるでしょう。連絡はめったになく。
何十年も生きてきた、働いてきたというプライドもあるでしょう。
この方の怒りは私達に対しての物では無いと考える事が出来るようになりました。
苦手を得意にする。この経験は後に本当に強味になりました。
ピンチはチャンスといいますが「つらかったら相手にしなくていい」と上司に言って頂いたのにガンガン距離を縮めていく事にしました。
普段から怒鳴られ続けた私ですが、徐々にその方に変化が生じます。
~こいつは俺にこれだけ言われてるのにまた話しかけてくる~
相手はそんな気分になっていたような気がします。
入浴の話
入浴は一人一人その方の入浴の癖がありますし希望があります。
早ければ早いほうがいいわけですが、相手がいることですし多少は時間がおしても仕方が無いと私は思っています。
当時は安全かつその方の最適な手順・方法のシュミュレーションとかしていました。
さて入浴もその方の入浴の癖も理解してくると徐々に自分の気持ちを私に話して頂ける様になりました。
ご自身の病識の理解も進んできたのでしょうが、二人きりの空間を最大限に活かして希望をききつつ、その方の怒りの背景や気持ちを理解していく。
ある日こんな事を話してくれました。
「人は思い出だけじゃ生きていけないんだよな」
当たり前ですが、今見えているその方が出会った時の状態で生まれてきた訳では無く、人には過去・現在・未来があること。
できるだけ最初の印象や怒られた事、出会う前の情報・現在だけで苦手とか気難しいとレッテルを貼る事はしない方がいい事を知りました。
一度信頼関係が出来ると、周囲に人がいる環境では話したくないような個人的な事も、入浴中何でも話して頂ける関係になりました。
密閉されたお風呂という空間で信頼関係の回復とアセスメントをすすめる。
これが新人の頃の入浴体験でした。
*とはいえ今は誰もが必ず打てる手を打ち続けるのでは無く本当につらくなる前に距離を取ることも場合によっては必要な場面があると思っています。色々なケースがありますし無理なく仕事を続ける事が大事です。
ちなみにこの方は違う施設に移ったんですが、後日その施設から連絡がありました。
「怒ってばかりなんですけどどうやって介入していたんですか?」と。
ふりだしに戻ってしまったんですね。
*補足ですが実務者研修の実技演習は「プライバシーの配慮」「スキンチェック」「ご自身出来る事は促して(理由をしっかり伝え)ご自身に実施して頂く」が重要だと教わります。その場所での関わりは教わる事はないと思います。
ここまでお読みいただいてありがとうございます。
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